【農家向け】農地転用の田畑、耕作は「いつまで」続ける?手続きの流れと「耕作停止の最適タイミング」を徹底解説

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【農家向け】農地転用の田畑、耕作は「いつまで」続ける?手続きの流れと「耕作停止の最適タイミング」を徹底解説

農地を家や駐車場にしたいと考え始めたものの、「いつまで耕作を続ければいいのか?」「手続きの途中で耕作をやめても罰則はないのか?」といった不安を抱えていませんか?

農地転用には、「正しいタイミング」「正しい手順」があります。
これらを誤ると、最悪の場合、重い罰則や原状回復命令を受けるリスクがあります。

【結論を先に】

あなたが転用を考えている農地は、原則として農地転用の許可通知書(または届出の受理証明書)が交付されるまで、農地として管理・耕作を続けるべきです。

この記事では、農地転用を安全かつスムーズに進めるために、最も重要な「耕作停止の最適タイミング」と、必ず知っておくべき手続きの流れ、そして費用(決済金)について詳しく解説します。


農地転用に関わる「農地」の定義と休耕地の注意点

農地転用を考える上で、まず重要なのは「農地とは何か」という定義です。

農地法でいう農地は、登記簿の地目(田・畑)ではなく、土地の現況で判断されます。

農地法でいう「農地」の判断基準

農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)では、農地を「耕作の目的に供される土地」と定義しています。

(定義)
第二条 この法律で「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいい、「採草放牧地」とは、農地以外の土地で、主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供されるものをいう。

引用:e-Gov 農地法
  • 現況主義の原則: 登記簿上の地目が「宅地」であっても、実際に作物が植えられ、肥培管理(手入れ)が行われていれば農地とみなされます。
  • 果樹園も農地: 柿やみかん、お茶などの果樹園も、継続的に耕作・管理が行われている限り、農地として扱われます。
  • 誰が調べる?: 地域の農業委員会が、定期的なパトロールや転用申請時の現地調査で、その土地が現況農地であるかを判断します。また、固定資産税課税のため、市区町村役場の税務課も調査しています。

耕作を止めても「農地」と判断されるケース(休耕地のリスク)

「もう転用を決めたから」と耕作を数年止めていても、すぐに農地でなくなるわけではありません。

  • 休耕地(耕作放棄地)の扱い: 耕作を休止している土地でも、客観的に見ていつでも農地に戻せる状態であれば、農地と判断されます。
  • 非農地化の認定は難しい: 勝手に耕作を止めて放置しても、「非農地証明」を得るには、物理的に農地への復元が極めて困難と認められる必要があり、ハードルは高いです。

中途半端に耕作を止めていると、「いざ、農地転用」と手続きする際、肥培管理できていない=農地法違反(無断転用)と判断されてしまい、農地転用の手続を受け付けてもらえない恐れがあります。

生産緑地・農振農用地は休耕のリスクが高い

市街化区域、市街化区域区域以外(市街化調整区域、都市計画区域外)でも通常の農地であればこんなことはありません。

しかし、生産緑地(市街化区域内の特定の農地)・農業振興区域内農用地(優良農地)はそれぞれ生産緑地法、農業振興地域の整備に関する法律の適用を受けている上、農地として税制面で優遇されている(固定資産税評価額の大幅な減額)ために、無断転用・耕作放棄に対しては厳しいペナルティがあります。

特に、農地転用の手続をして売却や宅地化する場合に、生産緑地・農振農用地で肥培管理ができていないと、「農地として耕作できる状況にしてから手続してください」と冷たく指導されます。恐ろしい・・・

知っておくべき農地転用の手続きと罰則

農地を農地以外の目的(宅地、駐車場、資材置場など)に変えることを「農地転用」といい、農地法に基づいた手続きが必須です。

無断で転用した場合の重い罰則

農地の無断転用、ダメ、絶対

農地転用の許可や届出を経ずに、無断で農地を掘削したり、コンクリートを敷くなどして転用(資材置場や宅地造成など)を行った場合、農地法に違反します。

第六十四条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一 第三条第一項、第四条第一項、第五条第一項又は第十八条第一項の規定に違反した者
二 偽りその他不正の手段により、第三条第一項、第四条第一項、第五条第一項又は第十八条第一項の許可を受けた者

引用:e-Gov農地法
罰則規定(根拠法:農地法)内容
懲役3年以下の拘禁刑
罰金300万円以下の罰金(法人の場合は1億円以下の罰金)
行政処分知事等による工事停止命令原状回復命令

無断転用が発覚すると、せっかく造成したものを全て農地に戻さなければならない(原状回復)という、金銭的にも労力的にも大きなリスクが生じます。

また、悪質な場合には拘禁刑・罰金という大きなリスクがあります。

耕作できない場合は農業委員会へ相談

罰則とか言われても、「地元を離れているから耕作できない」「畑仕事なんてやる時間も人手もない」という方も多いでしょう。

そういった方は、地元の農業委員会が主宰して、農家への農地貸出・売却をあっせんしていますので、「農地を耕作できないから貸したい・売りたい」と相談しましょう。

近年は大きな農業法人が広く農地を借りて営農しているケースも増えています。
耕作できない場合は、農業委員会へ相談しましょう。

参考:農地移動適正化あっせん事業(愛西市)

市街化区域「届出」とそれ以外「許可」の違い

転用手続きは、土地がどの区域にあるかによって、難易度と期間が大きく異なります。

区域手続き審査の厳しさ期間の目安
市街化区域届出制(農地法第4条・第5条)比較的緩やか1週間~2週間程度
市街化調整区域など許可制(農地法第4条・第5条)厳しい1ヶ月~2ヶ月程度

特に市街化調整区域などの「許可」が必要な土地は、転用計画が農地法に定める基準、都市計画法(分家住宅などの要件)、その他法令(砂防法、河川法等)に合致しているか厳しく審査され、最後まで不許可となるリスクがあります。

転用する農地、耕作は「いつまで」続けるのが正解?

いよいよ本題です。農地転用申請前後、いつまで耕作を続ければいいのか、その最適なタイミングを解説します。

農地転用手続きの「標準的な流れ」と審査にかかる期間

一般的な農地転用(許可)の標準的な流れと、期間の目安は以下の通りです。

  1. 事前協議(農振除外など)
  2. 土地改良区への手続き(決済金の納付・意見書の取得)
  3. 農業委員会へ申請毎月1回締め切り
  4. 農業委員会総会・審査
  5. 都道府県知事等の決裁
  6. 許可通知書の交付(申請から約1ヶ月~1ヶ月半後)

計画を立てる際は、この審査期間を考慮し、「収穫が終わったらすぐに申請できるように準備する」といった形で、耕作のサイクルと行政手続きのサイクルを合わせるのが最適です。

最も重要な判断!「耕作を止める最適タイミング」はいつ?

耕作を止めるのは、原則として「農地転用の許可通知書が交付された直後」です。

理想的な流れは次のとおりです。

  1. 許可通知書が交付される
  2. 農地としての最後の収穫(耕作停止)
  3. 造成工事開始

なぜ「許可前」に耕作を止めると危険なのか

農地法の観点から、許可前に耕作を止める行為は、以下のような深刻なリスクを伴います。

  • 無断転用と見なされるリスク: 許可が下りる前に造成を始めたり、実質的に農地として使わなくなると、無許可で転用を行ったとみなされ、罰則の対象となる可能性があります。
  • 申請要件を欠くリスク: 耕作放棄状態になると、「この土地はもはや農地としての管理が行われていない」と判断され、審査の過程で許可が下りなくなる可能性が高まります。

つまり、耕作を続けることは、「この土地を転用目的で申請しているが、まだ農地として使っている」という証拠であり、罰則を避けるための最低限の義務とも言えます。

特に、許可前の造成着手は絶対にNGです。
許可手続きが進んでいても、事前着手が発覚→工事差し止め→不許可、というリスクがあります。

6月下旬に農地法の許可予定でも稲作はやるべき?

結論としては、その年の稲作は休耕で良いでしょう。
なぜなら、せっかく植えた稲が無駄になるからです。(当然といえば当然)

愛知県では4月~5月に田植え、8月~10月に収穫、というのが稲作のスケジュールです(品種によって変動)。
6月下旬に許可予定であれば7月・8月には土地造成開始(着工)となりますが、稲が生育していると撤去するわけにはいきません。

ですので、その年は休耕として雑草が生えない程度に管理しておけば良いでしょう。
事前相談時に農業委員会と休耕時期について、相談しておくと安心です。

相談~許可まで1年以上かかる農振除外などであれば、収穫時期とうまく調整しておくと良いでしょう。

土地改良区(水利権)への「決済金」と手続きの流れ

農地が水路などの土地改良施設の恩恵を受けている場合、農地転用手続きと並行して、土地改良区への手続きが必要です。

決済金(清算金)とは?

土地改良区は、水路や排水施設の維持管理を組合員(農家)からの賦課金(会費のようなもの)で行っています。

農地を転用して受益地から外れる(組合から脱退する)際、「将来負担するはずだった賦課金相当額を一括で清算する」のが決済金です。

  • 支払い義務: 公共事業用地(道路など)として売却・寄付する場合であっても、原則として納付義務があります。
  • 相場の目安: 土地改良区によって異なりますが、愛知県では1㎡あたり10円~500円程度と幅があります。

決済金手続きの流れ

土地改良区からの「意見書」は、農業委員会へ提出する農地転用許可申請の必須書類です。

  1. 土地改良区へ届出:「地区除外申請」を行います。
  2. 決済金の納付:請求された決済金を納付します。
  3. 意見書の取得:納付確認後、「農地転用について異議ない」旨の意見書が交付されます。
  4. 農業委員会へ提出:この意見書を添付して、農地転用許可申請書を提出します。

農地転用許可申請の必須書類のため、不足していると申請受付をしてもらえません。(後出しできる、ゆるいところもありますが・・・)
必ず早い段階で土地改良区に相談しましょう。

後悔しないための農地転用の重要チェックポイント

手続きが完了した後、あるいは申請を行う段階で注意すべき点をまとめます。

農地転用に伴う「税金」と「費用」

農地転用は費用が多岐にわたります。事前に総額を把握しておきましょう。

費用・税金の種類概要備考
土地改良区決済金将来分の賦課金の一括清算譲渡の場合は譲渡費用として控除可。
造成費宅地化するための整地、土盛り、擁壁工事費用転用目的による。
専門家報酬行政書士(申請代行)、測量士、司法書士(登記)依頼する場合のコスト。
固定資産税翌年度から宅地並みの評価額に変更転用後は税額が大幅に上がる
譲渡所得税転用を伴う売買(5条転用)の場合決済金は控除できる費用となる。

残った農地や隣接農地への配慮

転用を行うことで、残る農地や隣接する農地に迷惑をかけない計画であることも、転用許可の重要な要件です。

  • 残りの農地形状: 転用した結果、残った農地が極端に細長くなるなど、効率的な農業経営に支障をきたす形状にならないこと。
  • 水利・日照: 造成工事によって、隣接する農地の水の流れ(排水)を妨げない、または建築物によって日照を遮らない計画が必須です。隣接農地といえど、家を建てると長い付き合いになります。近隣トラブル回避のため、事前に隣地の所有者には計画の概要を説明し、理解してもらいましょう。

事前の相談先リスト

農地転用をスムーズに進めるには、以下の専門機関に相談するのが鉄則です。

  1. 農業委員会: 農地法の手続きを所管する窓口。まずはご自身の農地の状況を相談しましょう。
  2. 土地改良区: 該当する農地が土地改良区内にあるか確認し、決済金の有無や手続きについて相談します。
  3. 行政書士: 煩雑な農地転用許可申請の書類作成や代行を依頼できます。

まとめ:農地転用の流れと耕作停止のタイミング

農地転用は、あなたの財産を有効活用するための大きな一歩です。最も重要なポイントを再確認しましょう。

  • 耕作を止めるタイミング: 農地転用の「許可通知書」が下りるまでは、農地として管理・耕作を続けることが、無用な罰則リスクを避ける唯一の方法です。
  • 手続きの連携: 農業委員会への申請だけでなく、土地改良区への決済金納付(意見書取得)も許可申請の必須条件となります、事前相談では土地改良区の調査も実施しましょう。
  • 計画性: 転用後の残存農地や隣接農地に配慮した計画を立て、事前に費用や税金のシミュレーションを行いましょう。

農地転用を安全に進めるために、まずは地元の農業委員会に相談し、ご自身の土地の状況を正確に把握することから始めましょう。

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