愛知県の市街化調整区域で「事務所」を建築する方法は2つだけ!
本記事では、市街化調整区域で事務所を建てる際のメリットやデメリット、そして愛知県で許可を得る具体的な方法について解説します。
特に、既存宅地での事務所建築や、特定業種に限定された建築のポイントについて詳しく説明します。
市街化調整区域とは
定義と目的
市街化調整区域は、都市計画法に基づき市街化を抑制する目的で指定された地域です。
自然や農地を守るために、建物の建設は原則禁止されています。
この区域は、無秩序な開発を防ぎつつ、人々の生活環境と自然のバランスを保つための区域です。
市街化区域との違い
市街化区域は、既に市街地として開発されているか、今後開発が進む地域です。
したがって、建築の規制は緩く、住宅や事務所の建設が可能です。
一方、市街化調整区域では厳しい建築規制があり、基本は建築禁止です。
そのため、特定の条件を満たす建物以外は許可されません。
例えば、農家住宅や分家住宅がその具体例です。
このように、両区域では開発や建築に対する規制が大きく異なります。
市街化調整区域で事務所を建てるメリット・デメリット
そんな、建築規制の厳し市街化調整区域ですが、事務所を建てるメリット・デメリットはどんなものでしょうか?
メリット
市街化調整区域で事務所を建築するメリットは大きく次の5つです。
- 土地価格が安い:初期経費が押さえられます
- 固定資産税が安い:市街化調整区域は都市計画税が非課税で、市街化区域よりも維持費が安く済むでしょう
- 広い土地が確保できる:車中心のエリアなので、駐車場はお客様・従業員用の確保をお勧めします
- 静かな環境:騒音が少なく、静かな環境で業務を行えます
- 自然に囲まれている:リラックスした空間で、ストレスを軽減できるでしょう
費用面だけでなく、環境面でもメリットが多いのは意外ではないでしょうか?
事務所が街中にある必要がなければ、市街化調整区域も一つの良い選択肢です。
デメリット
一方、市街化調整区域特有のデメリットもあります。
- 事務所の建築は難しい:事務所が建築できる基準は少なく、要件も厳しいです
※建築方法は次の章で詳しくご紹介します - インフラ整備が不十分:市街化調整区域はインフラ整備が遅れており、追加の整備費が発生することがあります
- 生活の利便性が悪い:商業施設・娯楽施設が少ないため、生活の利便性が悪い傾向にあります
このようなデメリットがありますが、取引先と直接行き来の少ない業種、ネット中心の業務であれば
問題ないでしょう。
愛知県の市街化調整区域で「事務所」が建築できる方法は2つ!
愛知県の市街化調整区域では、事務所を建築する方法が2つあります。
1つは既存宅地の土地を買って建築する方法で、最もスタンダードな方法です。
もう1つは、線引き前からの事務所を買い取って建て替える方法です。
それぞれについて解説します。
既存宅地(愛知県開発審査会基準第17号)の土地を買って事務所を建築する
愛知県内の市街化調整区域で事務所を建築できるのは既存宅地(基準第17号)のみです。
そもそも既存宅地は専用住宅(共同住宅含む)をはじめ店舗、事務所、倉庫、工場の建築が可能です。
愛知県開発審査会基準第17号(既存宅地での開発や建築行為等)
事務所や倉庫などが対象です。ただし、建築基準法別表に定める条件を満たす必要があります。
引用:愛知県HP
しかしながら、既存宅地は誰でも購入でき・さまざまな用途の建物が建築できるため、市街化区域の
土地に匹敵する価格になることが多く、「土地価格が安い」というメリットが失われます。
では、どうすれば良いでしょうか?
実は、市街化調整区域で事務所を建てる裏ワザが存在します。
【裏ワザ】線引き前から建っている事務所の建て替え
市街化調整区域と市街化区域を分けた日を線引き日と呼びます。
愛知県の線引き日は一部を除いて昭和45年11月24日です。
そして、線引き前から建っている事務所は、同じ用途・敷地での建て替えが可能です。
この建て替えには建築許可が不要で、所有者にも特に制限がありません。
そのため、昭和45年以前から建っている事務所を購入できれば、許可不要で事務所を建築できる可能性があります。
※建て替えの相談は、行政書士や建築士、または建設事務所で行いましょう。
勘の良い方は気付いているかもしれませんが、線引き前から事務所が立っている土地は既存宅地です。
しかし、破産や相続人が手放すため、安く売りに出されているケースもあります。
下記のポイントを注意して、物件を探してみましょう。
掘り出し物があるかもしれません!
- 建物の用途が「事務所」:同一用途での建て替えなので、登記簿などで用途を確認します
- 建物の建築年月日が昭和45年以前:昭和46年以降でも許可を受けた要件によっては可能
- 建物が現存している:建て替えなので、更地になっていて「昔事務所があった」ではダメです
市街化調整区域の貸事務所は危険(都市計画法違反の可能性大)
市街化調整区域で用地を探していると、「貸事務所」の文言が見つかるかもしれません。
しかし、市街化調整区域の貸事務所のほとんどは都市計画法違反です!
なぜなら、市街化調整区域で建築できる事務所は「自己用」に限られるからです。
「自己用」の事務所で建築した建物は当然、他人に賃貸・売却は禁止されており、他人が使って営業していると都市計画法違反として是正勧告(許可の取り直し)や営業停止命令の恐れがあります。
一番多いのは廃業したコンビニに飲食店(ピザ屋など)が入っているケースです。
周辺住民サービス(34条1号)での許可を取って建てたコンビニが撤退する際、地主さんとしては
「何かに使える」からと建物を残して土地を返してもらうことがあります。
※契約上は通常、更地にして返却
農地転用した場合などは農地に戻すことができず、せめて残った建物で賃貸事業をと考えることもやむを得ないかもしれません。
しかし、都市計画法違反の状態では、店舗を借りて営業してもリスクが高いです。
市街化調整区域では、事務所・店舗を借りる場合にも都市計画法の制限を知っておきましょう。
特定の店舗や業種は建築可能(都市計画法第34条第1号)
前章で紹介しましたが、市街化調整区域でも都市計画法第34条第1号に基づき、特定の店舗・業種の建物が建築可能です。
以下に病院やコンビニ、飲食店など、具体的な事例を紹介します。
また、これらの建物は農地を転用して建築も可能です。
病院
病院は公益性が認められるため、市街化調整区域でも例外的に建築が許可されます。
規模は診療所(クリニック)で、大病院などは建てられません。
コンビニエンスストア
コンビニは住民の生活利便性を高めるため、許可を受けて建築が可能です。
飲食店
飲食店も、地域の生活利便性を考慮し、許可を受けて建築が可能です。
種類は日本料理、西洋料理、喫茶店などに限定されています。
また、宅配専門店は建てられない点にも注意しましょう。
市街化調整区域でも地域住民の生活を維持・向上させるため、特定の業種は例外的に許可を受けて建築可能です。
ご自身が考えている業種が該当すれば、土地費用を抑えて建築できるかもしれません。
具体的な業種(愛知県基準)は下記のとおりです。
別表(法第34条第1号審査基準第2項第1号関係) ※愛知県HP参照
気になった方は、愛知県の各建設事務所または行政書士に相談しましょう。
まとめ
市街化調整区域で事務所を新築する方法は、2つしかありません。
既存宅地での許可(基準第17号)を受けるか、線引き前からの事務所の建て替えです。
そして事務所や店舗は原則自己用に限られるため、市街化調整区域での「貸事務所」は都市計画法違反の可能性が高いことにも注意してください。
市街化調整区域で事務所を建てる場合、既存宅地や線引き前の事務所を探しましょう。
そして、業種が都市計画法第34条第1号に該当するかも調べることをおすすめします。
また、具体的な話については必ず行政書士・建築士に依頼して調査してもらいましょう。
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