市街化調整区域の土地選びは大変ですが、広い土地を安価に手に入れられる魅力があります。本ガイドでは、初心者でも安心して土地選びができるよう、建築許可条件や手続き、具体的なエリアの特徴を詳しく解説します。
はじめに
市街化調整区域とは、都市計画法に基づき、市街化を抑制するために指定された地域です。この区域では、新たな開発や建築が制限されています。しかし、分家住宅など、一定の条件を満たせば許可を受けて建物の建築が可能です。
市街化調整区域での土地は、特に広い土地を安価に手に入れたい方、静かな環境を求める方から注目されています。しかし、市街化調整区域の不動産購入には特有の手続きや注意点があります。
本記事では初心者でも安心して土地を選べるよう、詳しく解説していきます。
知っておきたい!初心者向け、市街化調整区域のおすすめ不動産
市街化調整区域は開発や建築が原則禁止されています。ただし、元々その市街化調整区域に住んでいた人の子や孫しか建てられない(分家住宅)、特定の用途(病院、コンビニ、福祉施設等)など、一定の要件を満たせば建築・開発行為が可能です。そしてこれらの建物は、基本的に地域に昔から住んでいるなどの人の要件(属人性)や、地域に必要な事業に供するものという要件が必要で、誰でも建築できるわけではありません。
しかし、一部の不動産やエリアでは誰でも許可を受けて建築できるものもあります。ここでは、代表的な要件を3つ紹介します。
なお、愛知県開発審査会基準は愛知県内にのみ適用される要件です。また、名古屋市・一宮市・春日井市・岡崎市・豊田市・豊橋市は独自の開発審査会基準がありますので、各市へ確認が必要です。
都市計画法第34条11号指定区域(岩倉市、新城市、江南市、稲沢市、犬山市)
都市計画法第34条第11号指定区域は、市街化調整区域の中でも地方公共団体が条例で区域等を指定すれば、市街化区域と同様に開発が可能となる区域です。用途、面積に関する要件は下記のとおりです。
(1)予定建築物等の用途(条例第3条第1項第1号)
引用:愛知県HPより(市街化区域に隣接又は近接する等の地域における開発行為等の許可基準のあらまし)
建築基準法別表第2(い)項第1号から第3号に掲げる専用住宅、兼用住宅、共同住宅
(2)敷地面積、建築物の高さの限度(条例第3条第1項第1号イ、ロ)
敷地面積:200平方メートル以上
建築物の高さ:原則10m以下
愛知県知事許可エリアでは、岩倉市・新城市に設定されています。また、事務処理市では江南市・稲沢市・犬山市にも設定されています。
指定区域であれば、誰でも許可を受けて専用住宅を建築できます。また、農地転用が可能な点も大きな特徴です。あまり知られていない条例ですので、穴場かもしれません。
たとえば、下記のような物件も存在します。
江南市勝佐町西郷 土地 312㎡(約94.38坪) 1,480万円
引用:三井のリハウスHPより
市街化調整区域で土地探しをしている方は、34条第11号指定区域の物件を探してみましょう。
愛知県の既存宅地(愛知県開発審査会基準第17号)
既存宅地は昭和45年以前から宅地として利用されている土地です。昔からの宅地ということで、こちらも誰でも許可を受けて建物が建てられます。ただし、市街化調整区域内では比較的メジャーな要件のため人気が高く、近隣の市街化区域並みの価格ということも珍しくありません。
価格よりも、静かな環境重視の方などにはおススメです。
愛知県開発審査会基準第16号(やむを得ない用途変更)による建物
基準16号は、「やむを得ない用途変更」と呼ばれる基準です。通常は他の人が買っても再建築できない分家住宅や農家住宅を、所有者の死亡や破産などの「やむを得ない事情」により売却しなければならない場合は、この16号の許可を受けて購入することができ、再建築もできる建物となります。
売主の厳しい条件
16号許可を受けるには、売主の事情がとても重要です。売主側の条件は下記の通りです。
4 基準第1項第1号に規定する「やむを得ない事情」とは、次に掲げるものとする。
(1)主たる収入者が、破産法(平成16年法律第75号)に基づく破産手続開始の決定又は民事再生法(平成11年法律第225号)に基づく再生手続開始の決定により、現在の住宅に居住していることが困難になった場合。
(2)当該住宅が裁判所の競売又は官公庁の公売に付された場合。
(3)主たる収入者の死亡、重度障害、失踪により、経済的負担が生じ、現在の住宅に居住していることが困難になった場合。
(4)主たる収入者の転勤、転職又は定年により、現在の住宅に居住していることが困難になった場合。
(5)家族の健康上の事情、家族構成の変更に伴い現在の住宅に居住していることが困難になった場合。
(6)社会情勢による経営の悪化等の理由により現在の事業を行うことが困難になった場合。
いずれかの要件を満たせば許可を受けられますが、(1)~(3)は特に重い要件が必要です。(4)~(6)は比較的容易に見えますが、「現在の住宅に居住していることが困難になった場合」という要件が必要なため、転勤や定年だけでは認められません。
実例
変な話ですが、「定年したので売却してマンションに住み替えをしたい」、「子どもが独立して夫婦二人になったので平屋の小さい家に引っ越したい」という理由は、現在の住宅に居住していることが困難とは言い切れないので、許可は難しいです。私の手掛けた案件で認められた事情は次のとおりです。
- 会社役員の方が80歳を超えて仕事を退職し、免許を返納するため買い物などの生活が難しい、かかりつけの病院が遠方(自宅からは車が無いと通えない)、子どもも遠方に住んでいて援助が受けられない。そのため、今後は現在の住宅(分家住宅)に居住できない
- 高低差の高い土地に建てた分家住宅で所有者が高齢になった。足を悪くしており、道路と家の高低差が障害になっている。坂の途中に建っている家で、買い物も車が無いと難しい。そのため今の住居に住むことが難しく、息子夫婦の家で同居したい。
このように、病気や退職に加えて、どうしても住むことが困難な事情(車が無いと生活できない、病院に通院できない等)が必要です。転職も、県内だと理論上通える(車で2時間程度?)ので難しいかもしれません(詳しくは伏せますが、「物件が西三河⇒勤務先が守山区」でもダメでした・・・)
買主の条件は緩い
一方、買主の要件はかなり緩いと言えます。基本的に、下記の条件を満たしていればほぼ大丈夫です。
- 不動産を持っていない
- 現在、賃貸物件に住んでいる若しくは実家に住んでいる
家を建てるために土地探しをしている方のほとんどは該当するのではないでしょうか?
従って、愛知県開発審査会基準16号の該当地は結構な確率で「誰でも買えるオトクな調整区域の土地」と言えます。見つけたら、候補地の一つとして検討しましょう。
市街化調整区域のメリット・デメリット
市街化調整区域の土地を買って住むには、様々なメリット・デメリットがあります。
メリット
- 土地価格が比較的安い
市街化区域と比べて土地価格が低いため、広い土地を手に入れやすいです。 - 固定資産税が低く抑えられる
税負担が軽減されるため、長期的な資産運用にも向いています。 - 静かで落ち着いた環境が得られる
都市部の喧騒から離れた静かな環境で生活できます。
デメリット
- 新築やリフォームに制限がある
建築には許可が必要であり、その取得には時間と手間がかかります。 - インフラ整備が遅れている可能性
上下水道やガスなどのインフラ設備が不十分な場合があります。 - 商業施設や重要施設が少ない
日常生活に必要な施設へのアクセスが不便な場合があります。
市街化調整区域で土地探しするステップ
- 情報収集
自治体の都市計画図や不動産情報サイトを活用し、市街化調整区域内で購入可能な土地を探します。専門の不動産仲介業者への相談も有効です。 - 現地確認
実際に現地を訪れ、インフラ状況(上下水道、電気、ガス)や周辺環境(学校や病院など)の利便性を確認します。 - 許可取得手続き
建築許可や開発許可が必要な場合は、自治体に相談し申請手続きを行います。許可取得には費用と時間がかかるため、事前に見積もりを取ることが重要です。
費用とローンについて
市街化調整区域での建築には行政書士・建築士へ依頼する報酬が必要です。申請内容によって異なりますが、10万円から数十万円程度かかります。
また、市街化調整区域では担保評価が低く見られるため、住宅ローン取得時には金融機関との事前相談が重要です。
市街化調整区域で土地選びをする際の注意点とアドバイス
- 長期的な視点での土地選び
将来的な売却の難しさや生活利便性についても考慮する必要があります。家族構成やライフスタイルに合った土地選びを心掛けましょう。 - 専門家への相談の重要性
不動産専門家や自治体担当者への相談を通じて、具体的なアドバイスを得ることがおすすめです。法律や手続きについて詳しい情報を得ることで、不安なく購入プロセスを進められます。
まとめ
市街化調整区域での土地購入は、多くのメリットがありますが、それ以上に注意すべき点も存在します。本記事で紹介した情報を参考に、自分自身と家族に最適な土地選びを進めてください。初心者でも安心して購入できるよう、不動産専門家との連携も活用しながら慎重に進めましょう。
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